「さらだ」の活動趣旨や活動内容を紹介していきます。


by salad_lgbti

報告:さらだ企画vol.4『テレビの中の性的マイノリティ』

2010年3月14日に開催した、さらだの企画の報告です。
テーマは『テレビの中の性的マイノリティ』。

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MtFのトランスジェンダーで、性社会・文化史の研究者である三橋順子さんを招いての講演会を行い、講演後、グループに分かれて1時間ほどテーマに沿って話し合いました。全体で40人を超える方々にお越し頂きました。

●日本は早くからマイノリティがテレビに登場していた国

 日本って、世界ではとても稀な国です。1960年代というかなり早い時期から深夜番組を中心に、カルーセル麻紀さんなどがテレビに登場していました。今も、全国ネットのゴールデンタイムに毎日のようにはるな愛さんとか性的マイノリティの方が出演されていますよね。性的マイノリティをテレビメディアから疎外している国に比べると、たくさん登場させているという点では評価できると思います。ただ、どういう形で登場させているのか、そこに問題があると考えています。つまり、量的にはOKだけど、質的に問題があるということです。

●おすぎさんとはるな愛さんは同じカテゴリー?

 メディアでときどき使われる「クミアイ」という言葉があります。「『おかま』同業者組合」の略です。少なくともこの5、6年、バラエティ番組には「クミアイ」枠というのが1つあるようです。10人の出演者がいれば、1人は「クミアイ」からというのが番組の基本的な作り方ということです。
 大学の授業で「おすぎさん、もしくはピーコさんと、はるな愛さんは同じカテゴリーですか?」と学生たちに聞くと、3、4割が「同じだと思う」と答えます。理由を聞くと「テレビで同類にしてるから」という返事。これはメディアが作った「クミアイ」カテゴリーに影響されているわけです。

●メディアが作る「まとも」と「非まとも」

 おすぎさんやピーコさん、はるな愛さんなどは、メディア的に「クミアイ」の人ということになりますが、では「クミアイの人」って何かというと、メジャーなジェンダー・セクシュアリティではない人、つまり、シスジェンダーで異性愛の人以外の人です。性的に「まとも」な人たちと「まとも」じゃない人たちというカテゴリー分けなんです。だから「まともじゃない人」が「どう、まともじゃないのか」という点は問われないんです。ジェンダー・アイデンティティに違和感をもっているのか、セクシュアリティの問題なのかは問わない。だからトランスジェンダーもゲイも一緒くたに「クミアイ」の枠組みに入れてしまう。ピーコさんと愛ちゃんの見かけ、性的なあり様というのは、はどう見たって違うのに、「まともじゃない人」という括りでは同類なのです。

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●「おかま」は差別用語。放送禁止に

 ところで、「おかま」という言葉は、語源は江戸時代の俗語で「肛門」という意味です。そこから「肛門を性器として使う人たち、アナルセックスをする人たち」を「おかま」というようになります。具体的には、アナルセックスを仕事としていた、女装をした男娼の呼び名で、昔はかなり限定的な言葉でした。ところが、それが1980年頃から意味が拡大されて、女装している人全体、あるいは女っぽいゲイに対して広く使われるようになります。そういう使い方を広めたのは、テレビや雑誌などのメディアです。現在、使われている「おかま」は、そうした流れで、拡大リニューアルされた差別語なのです。
 戦後すぐの文献ですでに、女装男娼たち自身が「おかま」と呼ばれることを「屈辱的言葉」だと嫌がっています。それなのに70年近く経った今でもメディアは使用し続けています。テレビ局によっては使用注意用語にはなっているようですが、放送禁止用語にはなっていません。明らかに差別性を持った言葉なのに使っていいのです。

●「笑っていい」マイノリティ

 メディアでは、人種・国籍による差別、被差別部落出身者への差別、身体障害者への差別、女性差別、全部ダメです。当たり前のことです。だけど、性的マイノリティだけは差別していい、少なくとも「おかま」は笑っていいことになっているのです。ニュースやドキュメンタリーで、性的マイノリティの人権を擁護することが大事だと言いながら、その後のバラエティ番組で「おかま、おかま」と言って笑いを取る。こうしたダブルスタンダードはいったいどこから来るものなのでしょうか。

●当事者の間の不一致

 その答えの1つに、「おかま」という言葉に対して、当事者が必ずしも一致して怒っているわけではない、ということがあると思います。
 ゲイの方に多いのですが「別にいいんじゃない、おかまはおかまなんだし」とか「ワタシはおかまって呼ばれたい」とか言う。ゲイの方は、外見上「おかま」だってすぐにわかるわけではありません。いちばん指差されて笑われるのはMtFのトランスなのです。ところが、いちばん被害を受けているトランスジェンダーではなく、被害が少ないゲイの人の「おかま」容認論が通ってしまう。現実に「おかま」アイデンティティを持っている方もいるわけで、言葉狩りになるので全面的な使用禁止を主張するつもりはないですが、少なくともテレビなどのメディアで、他称・呼称として、人を指して使う言葉ではないと思います。この点をしっかり認識してもらうことが、メディアにおける性的マイノリティ差別を解消していくための第一歩だと私は考えています。

●テレビに出るのは、いかにも「らしい」人

 それからテレビの性的マイノリティの登場のさせ方、ここにもかなり問題があると思います。例えば、テレビがゲイの人を出すとき、いわゆる「オネエ」しか使わない。ゲイの人には結構マッチョなタイプが多いわけですし、外見上「普通」に見える方が圧倒的です。だけど、そういう人は出さない。「オネエ」だけしか出さない。すでに、ここにゲイのイメージに対する大変な作為があるわけです。
 あるいはMtFの人を出すとき、本当に女性らしい人、「まとも」に見える人は使いにくい。はるな愛さんも、女性らしくしていたのでは使ってもらえない。だから本意ではないと思うのですが、「おっさん!」と突っ込まれると男声で言い返す。それで「やっぱり男なんだ」「まともな人ではないんだ」ということを視聴者に納得させるわけです。

●レズビアンとFtMは出ない

 それからテレビにはレズビアンはいません。出してもらえません。絶対に居ると思うのですが、カミングアウトできない。女性の場合、かっての佐良直美事件(1980年)のように、レズビアンとわかったらタレント生命はお仕舞いです。テレビはすごい男性優位主義の社会ですから、女性は男性の性的対象でなければならない。男性の性的な視線を受け取れないレズビアンはテレビには必要ないという、男性中心的な構造がまだまだ根強いのだと思います。
 さらに言うと、FtMもテレビには出てこない。FtMはテレビだけじゃなく、水商売の世界でもMtFに比べて商業化が大きく遅れました。女性が充分な所得と遊ぶ時間を得ないと「ミス・ダンディ」のような業種は成立しません、商業的にはとても不利なことが、可視化が遅れた一因だと思います。

●テレビドラマ『ラストフレンズ』のミスリード

 2008年春にフジテレビで放送されたドラマ『ラストフレンズ』で、上野樹里さんが好演した瑠可という役は、同級生の美知留(長沢まさみ)が好きという設定で、ドラマの前半でFtMの性同一性障害を匂わす演出がいろいろなされました。ところが、後半のお父さんにカミングアウトするシーンで「私は男の人を好きにならない。なれないんだ」って言うのです。私は、どんなカミングアウトをするのか期待を込めて観ていたのですが、ズッコケてしまいました。「それはレズビアンのカミングアウトだろう!」。FtMのカミングアウトなら「私(の心)は男なんだ」になるはずですね。
 でも、瑠可がレズビアンでは視聴率が取れない。脚本家がインタビューで言っているのですが、レズビアン的な人物造形だと分かっていて、視聴率のために性同一性障害というレッテルを使った、ということです。

●ちょっと男の子っぽいだけで病院に?

 このドラマは、最終回20%を超える高視聴率でした。その結果、何が起こったかというと、自分がFtMだと思ってジェンダークリニックに来る10~20代の若い女性が激増したのです。つまり、瑠可のような女性が好きな、本来はレズビアン・カテゴリーの女性、あるいはせいぜい思春期特有の同性思慕を抱いている女性が、私は瑠可と同じ性同一性障害なんだ、瑠可のように病院へ行かなければいけない、というふうに思いこんじゃったということです。
 テレビドラマが誤解の種を蒔いて、それが現実に悪影響として現れているわけです。こういう明らかなミスリードが生じないように、テレビやメディアをしっかり批判的に観ていかないといけない。そして、あまりにひどい場合は、投書するなどきちんと批判すべきです。黙っていては何も変わりません。
 テレビメディアをしっかり監視して、ちゃんと抗議する、それが、性的マイノリティに対する誤解を減らし、社会的な差別をなくしていくために必要なことだと思うのです。


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参加者から寄せられた感想

●「 『オカマ』という言葉をTVでは放送禁止用語にするべきだ」と初めて聞いたときは禁止することが良いことなのか正直疑問でした。しかし、話を聞いているうちにTVの影響力の強さを感じそれくらいすべきなのだなと納得できました。
●女装で外出中に「おかま」と叫ばれ、グサっときたことを思い出した。
●「オカマ」の語源を私は知らなかったし、現代は意味も広くごっちゃに使われているんだと知りました。普通ではないことで悩んでいる人を笑ってはいけないのだと思いました。
●性の多様性について知ることができました。初めて聞く用語が多く(用語解説、助かりました)理解のスピードはゆっくりですが。異性愛者多数の社会で暮らしていると悪気なく異性愛を前提として会話をしてしまったこともたくさんあったでしょう。人には学習し、想像して、理解する力があると思うので、子どもの頃から正しい教育が受けられるようにする必要があると感じました。
●性的マイノリティを自分はずいぶん単純化してとらえていたんだな、と思いました。メディアの影響も大きいのだなと知りました。



『用語解説』
さらだ作成  ※企画当日は三橋氏作成の用語集が当日限定で配布されました。

【性的マイノリティ】
性的少数派、セクシュアルマイノリティとも言う。ゲイ(男性同性愛者)、レズビアン(女性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、インターセックス(間性)、トランスセクシュアル・トランスジェンダー(いわゆる「性同一性障害」)、Aセクシャル(性的欲求が男性・女性のどちらにも向かず、または薄い人)の人たちの総称。

【ゲイ】
男性同性愛者。ホモセクシュアルともいわれる。もともとゲイには「陽気な」の意味がある。

【レズビアン】
女性同性愛者。もともとは、古代ギリシアの女性同性愛者で詩人のサッホーが住んでいた「レスボス島に住む者」という意味。

【トランスセクシュアル】【トランスジェンダー】
【性同一性障害(GID)】
生物学的性(生まれながらに持っているからだの性)と性自認とが一致しない状況にある人たちのことを指す。性自認を人間の性の基本と据える観点から、からだの性を性自認へ合わせるために、現在、「障害(「性同一性障害」)」としてとらえることが多い。GIDはGender Identity Disorderの略。また、生れながらの性別に従って生きる多数派《非・トランスジェンダー》の事を、「シスジェンダー」と呼ぶ。
【MtF】【FtM】
MtF(Male to Female)は、からだの性は男性で性自認が女性である状態を指し、FtM(Female to Male)はからだの性は女性で性自認が男性である状態を指す。MtFやFtMでも性的指向はさまざまである。

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三橋順子(みつはしじゅんこ)さんのプロフィール

 1955年、埼玉県生まれ。性社会・文化史研究者。多摩大学非常勤講師、国際日本文化研究センター共同研究員、早稲田大学ジェンダー研究所客員研究員。専門はジェンダー/セクシュアリティの歴史、とりわけ性別越境(トランスジェンダー)の社会・文化史。
 21歳のころ、心の中の「もうひとりの自分(女性人格)」の存在に気づき、30歳で初めての女装を経験、35歳から「女装クラブ」に通い本格的に女装の技術を習得した。1995~2002年の間、新宿歌舞伎町の女装スナックなどでゲスト・スタッフを務める。 並行して、MtFTG(Male to Female Transgender)としての社会活動を開始し、ジェンダー/セクシュアリティについての研究・執筆・講演活動を始める。
 現在は、家族の理解を得て、社会的性別をフルタイム女性に移行し、日本におけるトランスジェンダー・スタディーズの構築を目指して著述・講演活動に専念している。
 著書に『女装と日本人』(講談社現代新書 2008年)、共著に『性の用語集』(同 2004年)、『性的なことば』(同 2010年)など。
 趣味は着物。宝物は、パートナー(女性)と息子。
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by salad_lgbti | 2011-01-11 22:52 | 企画の報告