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by salad_lgbti

さらだ企画vol.9 報告

2015年2月1日に開催した企画の報告です。
弁護士の永野靖さんに同性婚、パートナーシップの現状をお聞きしました。

さらだ企画vol.9 報告
性は多様、結婚は?
― 同性婚の現状について考える


 さらだでは同性婚やまたはそれに代わるパートナーシップ制度が自分にとって必要か、結婚そのものをどう考えるのか、長く議論してきました。今回、ゲイであることをオープンにし、同性婚の法整備の運動をされている弁護士の永野靖さんをお招きし、同性婚、パートナーシップの現状をお聞きしました。
 この企画の翌日、渋谷区長がパートナーシップ証明の発行を定めた条例案を発表し、偶然にもタイミングの良い開催となりました。

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●そもそも結婚って何?
 法律用語では「結婚」を「婚姻」といいますが、実は法律には婚姻の定義はどこにも書いてありません。
 でも、おそらく私たちが「結婚」というときにイメージするものは、人と人がお互いに好きになって、性的なものも含めて親密な関係を結び、同居して、互いに助け合い、できれば生涯を添い遂げる、というものかと思うんですね。そういうものが良いか悪いかは別として、とにかく実態としてそうなっています。
 そして、さらにその2人の関係を国家に登録する。すると様々な権利や義務が付与される、そういう仕組みが多くの国にあるわけです。
 「結婚」というのは、社会習俗として実際にある結婚というレベルと、もう1つ、国家に対して登録するという大きく2つのレベルがあるんだと思うんです。

●日本の現状:同性間で法的な婚姻はできない
 日本の民法の中に「婚姻は異性間に限ります」とはっきり書いてあるわけではありません。ただ「夫婦」とか、当然男女の関係だということを前提とした書き方になっているんですね。解釈上、日本の民法において同性間の婚姻は認めていないと、どの学者も言っており、また法務省としても同性間の婚姻を認めていないと解釈をします、ということだと思います。

●日本の現状:同性間で事実上のパートナーにはなれる
 けれど、事実上パートナーとしての関係を結ぶことは、当然、異性間と同様に同性間でもできます。例えば昔のアメリカにはソドミー法という同性間の性行為を違法とする法律がありましたが、日本の場合はないので、同性間がセクシュアルな関係を含めてパートナーとなることが法律上禁止されているわけではありません。

●日本の現状:社会的に同性間で「結婚」が承認・認知されていない
 もう1つ、同性のパートーナーが社会的に「結婚」「夫婦」であると承認し、認知されているかというとどうでしょう。男性が男性と同居していたとして、周りが「夫婦なんだね」と思うかというとそうはならないでしょう。もちろん2人が関係をカミングアウトしているか、またそのカミングアウトの難しさとも関係しています。
 というところが同性間の結婚の日本の現状です。

●片方だけが別れたくても別れられないのが結婚
 では、法律上の結婚、婚姻で、その効果としてどういう権利や義務が発生するんでしょうか。同居、協力、扶助義務、それから解釈で貞操義務があるとされています。婚姻費用の分担とか同姓を名乗るとかいろいろありますが、ざっくり言うと「お互いに助け合って生きなさい。浮気はダメです。」ということです。
 通常の恋愛であれば一方が別れたいと言えば基本的にそれで関係は終わりですが、結婚の場合には片方が一方的に別れたいと言っても離婚はできない、ここが恋愛との大きな違いかと思います。

●同性パートナーが突然死した30代男性 住む場所も財産も仕事も失った
 法律上、夫婦や配偶者に対しては、様々な権利が付与され、社会生活上の配偶者への取り扱いも様々ありますが、同性パートナーにはありません。『パートナーシップ・生活と制度』(緑風出版)という本から事例を紹介します。
       
 30代男性の話。長年のパートナーだった40代の男性と同居し、パートナーの実家の家業を手伝っていた。そのパートナーが発作を起こして突然死してしまった。
 30代の男性のところに救急隊員から突然電話がかかってきて「携帯電話の持ち主のご家族の方ですか?」と聞かれた。迷ったが「いいえ、同居人です」と答えた。「じゃ、ご家族の連絡先を教えてください」と言われ「どうしたんですか?」と聞き返したところ「意識不明なんですが詳しい病状はご家族にしか教えられません」と言われてしまった。パートナーの家族に電話をし搬送先の病院へ駆けつけたが、すでに息を引き取っていた。
 パートナーとの関係を周囲にあまり公にしていなかったため葬儀には一従業員として出席。マンションの名義はパートナーだったのでほとんどの家財道具を置いてマンションから退去した。預金もほとんどパートナーの名義だったので2人で築いた財産も彼の物とは見なされなかった。パートナーの生命保険はその親族のものになった。結局パートナーの実家の家業で働き続けづらくなり、仕事もやめてしまった。
         
 パートナーの死によって、大切なパートナーを失っただけでなく、住む場所も仕事も財産も失った。これはある意味、典型的な事例だと思います。

●個人情報保護法の運用、情報が伝わらない
 まず、救急隊員からの「ご家族にしか教えられません」という話ですが、個人情報保護法ではこういった意識不明などの場合には厚生労働省のガイドラインで関係者に教えてもよいことになっています。家族だけに限るとは書いていないので、同性パートナーに情報を伝えることは不可能ではないはずです。ですが、現場での運用の実態として、パートナーに情報が伝わらないという問題が生じてしまった、ということだと思います。

●葬儀、相続 2人の財産でも無権利状態に
 そして葬儀では、親族としては扱われず、辛い立場に立たされた。
 次に相続の問題です。2人は協力してマンションを買い、協力して預金もしたわけです。ただ、たまたま名義がパートナーだったために彼には何も残らなかった。遺言があれば彼は相続できますが、若いカップルですと遺言がないケースはたくさんあり、無権利状態となってしまいます。

●相続税、生命保険 配偶者としての配慮なし
 仮に、遺言がありパートナーにすべて遺贈とあった場合でも、相続税の問題があります。法律婚の配偶者には相続しても法定相続分までは税金がかからないようになっていますが、同性パートナーには遺贈の遺言があっても税額軽減の措置はなく、相続税は高額ですから決して小さくない不利益です。
 そして死亡保険です。保険金の受取人を同性パートナーにしたいといっても、今、生命保険会社は全部お断りなんです。一律そういう扱いになっているそうです。
※後に渋谷区の同性パートナーシップ証明が契機となって、ライフネット生命を皮切りに、第一生命、日本生命などでも同性パートナーを受取人にすることを認めるようになりました。

●外国人の同性パートナーだと強制送還も
 さらに、日本人と外国人カップルの場合です。
 異性間では結婚し、婚姻生活の実態があれば「日本人の配偶者等」という安定した在留資格がもらえますが、同性間では、日本で相手に出会い、一生添い遂げていこうという関係ができたとしても、在留資格はなく、国に帰らなければならない。好きな人と離れたくないと思えば不法滞在になってしまうわけです。常にビクビク暮らさなきゃならないし、労働条件が悪いところでしか働けないですよね。病気になっても、健康保険は使えないわけです。私自身、そういう相談を受けたことがありますし、逮捕されちゃった、強制送還された、という事案も実際にあります。
 同性パートナーに法律的な位置づけがないための非常に理不尽な例だと思います。

●憲法は同性婚を禁止しているのか
 日本で同性婚制度が実現できるのか、憲法の24条、13条、14条を紹介します。
 憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し…」となっているんですね。だから憲法は同性の合意のみの婚姻を認めていないんじゃないか、同性婚を禁止しているんだ、という話があるわけです。
 ところで憲法と法律の関係を説明しますと、憲法は最高法規です。法律は、国会で衆参両院で過半数で可決されればできますが、ただ、憲法に違反する法律は作れないんです。仮に憲法が同性婚を禁止しているんであれば、国会で同性婚法という法律を作ろうとしても憲法違反だということになってしまい、憲法改正をしないと作れないということになります。

●「両性の合意のみ」とは家制度の否定
 じゃあ憲法24条は同性婚を禁止しているか、です。法務省が公式な見解を出しているわけでなく、学者にもいろんな意見があります。
 ただ一致しているのは「戦前の家制度を否定するためにできた条文」ということなんです。戦前は戸主や親の同意がないとできない、家のための結婚だったんですが、そうじゃなくて、2人の両当事者が合意すれば結婚できるんだ、と定めたんです。だとすれば、「合意のみ」の「のみ」に意味があると読めば、日本国憲法第24条は同性婚を禁止していないと読める、という学者さんがいるし、私もそう思っています。

●同性婚は憲法の精神に沿ったもの
 憲法13条は人権の基本を定めている条文で、「自分が幸せと思うライフスタイルを追求して良いんだよ、それを国家は妨害してはいけない」というものです。そして14条は、文字通り平等を定めたものです。さらに24条2項に「〜個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とあります。
 この13条、14条、24条2項の趣旨から言えば、同性婚は憲法上の権利とまでは言えないかもしれないけれど、日本国憲法の趣旨に沿った方向だと言えるんじゃないかと思います。
※その後、LGBT支援法律家ネットワークの有志の弁護士で議論をして、私も、異性と婚姻することはできるのに同性と婚姻することができないのは、平等原則を定める憲法14条に違反していると考えるようになりました。

●同性婚は、同性愛者への社会的承認に効果
 同性婚を作るかどうか、実はセクシュアルマイノリティの中でもいろいろな意見があるかと思います。結婚という制度が歴史的にみれば女性を抑圧してきたという面がないわけではないので、そこに同性カップルが参入することについて疑問だという意見があります。
 私は同性婚はあってもいいかなと思っています。1つは具体的に困っているケース、理不尽なケースがある。2つめは、同性婚を作ることによって同性愛者が社会的承認を得られる効果が大きい。この理由が一番です。3つ目は平等。結婚制度の利用権というか、それは平等に保障され、同性パートナーにも選択肢があってしかるべきだと思っています。
 何らかのセクシュアルマイノリティについての権利を保障する法制度を整備していくよう、働きかけを強めていきたいと考えています。


〈参加した方から寄せられた感想〉
●憲法の言葉尻だけでなく、全体に流れる精神や作られた経緯を考えることが必要なのだと思いました。「憲法は味方」私も思いたいです。ヘテロの人とも話せたのが良かったです。
●結婚するという意味について再認識をすることができて良かったです。パートナーと生きていく上で必要な法律上の知識をこれから継続的に入手していきたいと思いました。
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by salad_lgbti | 2016-03-17 13:57 | 企画の報告